先輩から後輩へ。
船舶用ピストンの
限りない
挑戦は続く。
大日製作所は、今でこそ、日本有数の船舶用ピストンの生産量を誇るが、ここまでの道のりは決して順風満帆ではなかった。
船舶用ピストンの開発に初めて挑んだ際は、エンジンメーカーからの難易度の高い要望に必死にくらいつき、なんとか受注。
その後、ひとつひとつの仕事を通して信頼を積み重ねていきながら、任される製品の種類と生産量を年々増やしていった。
今回は3名に集まってもらい、この船舶用ピストンについて過去から現在へと話を進めてもらった。
話を聞いた3名

製造部
機械加工課
T・T

品質保証部
J・Y

営業部
A・K
プロジェクトが始まるまで
十数年前、船舶用の大型ディーゼルエンジンを手がけるメーカーを訪ねた社長の橋本は「うちでピストン部分をつくらせてほしい」と直談判した。しかし、担当者に「あんな重要な部品、そんな簡単には任せられない」と一蹴される。そこから粘り強くアピールを続けること約1年。ようやく、新型エンジンに搭載するピストンの試作品の引き合いを得ることができた。ついにチャンスをつかんだ橋本は喜んで図面を持ち帰ったが、そこからが本当の戦いだった。
新規参入の
難しい業界の
入口をこじあける。01
—プロジェクトがスタートした当時のことを教えてください。
プロジェクトの最初から携わったのは、この中では私だけですね。じつは、この船舶用大型エンジンを手がけるお客様の前に、
もう少し規模の小さな会社から中型船舶用のピストンの開発を受注し、ある程度の技術力と実績を備えてから、このエンジンメーカーに営業をかけたのです。
それでも簡単には受注できなかったんですよね?
船舶用ピストンは、万一不具合を起こせば、洋上で船が漂流すると言われるほど船舶にとって重要な製品。
エンジンメーカーによっては社外へ発注せず、自社で生産するという方針のところもたくさんあるほどだからね。
だから、どの会社も発注先を決めるのは慎重になるんですよね。
また、古くからある業界ということもあり、すでに開発を終えた製品の量産に私たちが介入するのも難しい。
だから「勝負するなら、開発から」という気持ちで営業をしていたんだと思います。
そうなんです。開発は本当に大変でした。船舶用エンジンのピストンの役割は、簡単に言うとエンジン内の空気の流れを生むこと。
その排気する部分に触れる部品の先端の形状を考えるのが難しいんです。
ひとつうまくいっても、少しずつ微調整しながら燃費の量や水力などを検証していかなければなりません。
—なるほど。開発段階は、考えただけでも、気が遠くなりそうな作業ですね。

納期のハードさ、
納品物の多さに
舌を巻いた。
—ちなみに、当時の開発で一番大変だったのはどんな点ですか?
まず、大量の試作品を短期間で開発しなければならなかったことです。最初は、そのスケジュールのハードさに圧倒されましたね。それまで、図面が手元に来てからひとつの試作品を仕上げるのに1ヶ月ほどかけていましたが、当時は2週間で6種類の試作品の開発が求められていましたね。「とにかく、なんとかしなければ」と必死でした。
そんなに時間がなかったんですか。まさに量産を勝ち取るための、産みの苦しみですね。その試作品の出来で、量産の発注が決まるわけですものね。
ある意味、力試しの時期だったのかもしれませんね。
そうなんですね。今の僕たちが当たり前のように船舶用ピストンを量産できるのは、T・Kさんたちが道を切り拓いてくれたおかげだったんですね。
社長からも「先輩がここまで頑張ったんだから、君も頼むぞ!」と言われたんです。
そうなんですね。今の僕たちが当たり前のように船舶用ピストンを量産できるのは、先輩方たちが道を切り拓いてくれたおかげだったんですね。
社長からも「先輩がここまで頑張ったんだから、これからも頼むぞ!」と聞いています。
—担当していない周囲の方々の協力もあったのですね。
はい。みんなの協力があったからこそ、短納期の中でお客様の要望に応えられたのだと思います。
ときにはお客様の担当者も私たちの現場に来て、意見を出し合って。そうした試行錯誤をくり返しながら、気づくと数ヶ月が経っていました。
数ヶ月間ずっと2週間で6種類のペースで試作品を納品し続けたんですか?すごいなぁ。自分がその立場だったら、同じことができただろうかと思います。
本当ですよね。当時は社長からも「いつできあがるの?」と進捗を何度も確認され、現場も常に緊張感がありましたね。
ときには、夜遅くまで会社に残って試作品をつくり続けることもありましたよ。大変だったなあ(笑)。

自分たちの
手がけた製品が、
ベストセラーを
勝ち取るという喜び。02
—ーそして、頑張りの甲斐があり、無事に量産の発注が決まったわけですね?
社長は、お客様から「ここまでよく、私たちの厳しいものづくりに付いて来てくれましたね」という労いの言葉をもらったと話していましたね。
やはり、信頼を勝ち取ったことが大きいですよね。その後、そのお客様からの依頼が社内でも増えた感覚がありました。
自分の手がけた製品が大日製作所の主力製品になったのはとてもうれしかったですね。
そのエンジンメーカーにとっても、私たちがピストンを担当した船舶用エンジンはベストセラー製品になったと喜びの声をいただきましたからね。
営業部では、今でもそのエンジンメーカーと取引を続けていますよね。
はい。営業としての役割は、納期や費用面の管理、品質の維持、そして新規契約先の開拓などがあるのですが、
当時はすでに3種類ほどの製品の量産が決まっている状況でした。でも、そこからも依頼される製品は増える一方ですからね。
そんなに大日製作所に依頼してもらって、ありがたいことですよね(笑)。
そのエンジンメーカーにとっても、自分たちの成長スピードに付いてくることができる製作所を探していたのだと思います。
その後、私が働いている第3工場に設備を増設し、量産が始まったということなんですね。
第3工場が整備されたおかげで、お客様の希望の生産スピードにも応えられているように思います。

若手にしかない、
体力と粘力で
新しい挑戦を続けて
ほしい。03
—改めて、大日製作所の強みはどんなところにあると思いますか?
お客様から“パートナー”のように思ってもらっているのは大きな強みではないでしょうか。他社には依頼できないことを、私たちに相談できる、というか。
そうですね。「難しい試作といえば、大日さんに」という雰囲気は感じています。
そんなふうに思ってもらえるのって、本当に誇らしい気持ちになります。品質管理、検査の面でも責任を持って対応し、お客様に届けれらるようにしたいと思います。
大日製作所は若手が多く、その若手たちが最先端の機械を使い、技術を磨いています。
難しいことにも粘れる体力があるから、思い切った挑戦もできる。そういった強みもあると思います。
—では、若手にもこれからさまざまなチャンスがたくさんありそうですね。
きっとこれから、どの分野でもさらなる技術革新があると思います。だから、これから入社してくる若者たちにとっても挑戦の海はとても広いのではないでしょうか。
船舶用ピストンに限らず、航空機やロボットの製品もありますし。
私は一度、実際に自分の手がけた製品が使われている船舶を見に行く機会がありました。その船舶は想像をはるかに超える大きさ。
「この大きな船が世界の海を旅するためのエンジンの一部をつくっているのか」と思ったら、心を強く打たれました。
これから入社してくる後輩にも、そうした感動を味わってもらいたいですね。

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この惑星に
まだないものづくりを。
さあ、この次は宇宙だ。
私たちは、技術へのあくなき探究心と自分自身の成長への向上心を持ち、
この惑星にまだないものづくりに一緒に挑み続ける仲間たちを求めている。